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医師の資産運用

 

顧客自身も学ぶ

イェール大学のスウェンセン教授が、絶対少数派である長期戦略をとるファンド・マネジャーについて述べていることは、そのままスイスのプライベートバンカーにもあてはまります。

 

(長期戦略をとるファンド・マネジャー)の前途は厳しい。結果が出るのはかなり先で、途中で値下がりするリスクさえ負っている。(中略)だが長期戦略をとるマネジャーは、かなり高い確率で、投資家の利益に貢献する。時間枠を長くとれば、期待リターンを高くして、税金をぎりぎりまで抑えられるからだ」

 

短期指向の金融機関が投資家の短期指向を煽り、長期投資への確固たる信念が揺らいでいる環境は、長期指向の金融機関にとって厳しいものです。短期指向の顧客は、長期戦略が結局のところ顧客の利益になることを容易には理解してくれません。マーケット・タイミングのような「敗者の戦略」をとりながら勝つのがプロだと思っている人もいます。そんな腰の据わらない投資家に短期指向の金融機関が甘い言葉をささやけば、結果が出る前に解約されてしまうかも知れません。こうして短期指向の金融機関に移った顧客は、やがて痛い目に遭うことになるでしょう。

そうならないためには、顧客自身も学ばなければなりません。専門知識は必要ありませんが、金融機関や投資アドバイザーの説く内容が「道理」か「無理」かの区別くらいは付くことが望ましい。アメリカの億万長者たちが、「1年以上株の売買をしていない」にもかかわらず、月平均8時間は学んでいることを思い出して下さい。

幸い、プライベートバンクの業務にはクライアント教育も含まれます。正しい金融知識があり、ファイナンシャル・リテラシーの高い顧客とは長期的な関係を構築しやすいので、クライアント教育は顧客自身とプライベートバンクの双方の利益になります。プライベートバンカーや投資アドバイザーとの普段の付き合いを通じて自然にファイナンシャル・リテラシーが身に付き、長期投資への信念も次第に醸成されるでしょう。そうなったらしめたものです。実際に運用を担当するバンカーやアドバイザーから知識や意見が得られ、暴騰や暴落に際してもクール・ヘッド(冷静さ)をもたらしてくれるのは、投資信託などにはないプライベートバンクの最大の利点でしょう。

 

あなたが主人であることの意味

だからといって自ら学ぶ必要がないわけではありません。あなたのお金なのです。絶対的な支配権はあなたにあります。もしあなたが短期指向で、ハイリスクな取引を望んでしまえば、バンカーやアドバイザーは顧客であるなあなたに合わせようとするでしょう。もしあなたに長期投資への信念がなく、相場の急落で腰が引けてしまったら、バンカーやアドバイザーは長期的なリターンよりもあなたの「短期的な安心」を優先させるかも知れません。あなたが主人である以上、投資の原理原則よりあなたの希望に従わざるを得ないのです。

だとすれば、プライベートバンカーやアドバイザーにいかに知識と経験があり、投資の原理原則を弁えていたとしても、それだけでは十分でないことになります。ですから単に任せるというよりは、あたかもチームとして適度な緊張関係があった方がいい。そのためには、顧客と金融機関の間に、投資の原理原則について共通の理解があるべきです。

金融機関の「道理」と「無理」を見分けることができれば、金融機関の食い物にされないで済みます。そして幸運なことに「道理に適った金融機関」に出会えたならば、金融機関に道理を引っ込ませないように気を付けながら、二人三脚で進みましょう。

遠回りのようで、これが成功への近道なのです。

 

**残念ながら現在の日本で、長期投資の原理原則を学ぶ機会はそう多くありません。そういう本は地味ですから出版社も出したがらないのでしょう。イェール大学のスウェンソン教授の本はいいのですが分厚くて高価な上に難解で、アメリカの事情に偏りすぎていて、日本での人気はなかったようです。その点、北村 慶氏の著書(『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント』など)は数少ないお奨め本です。

 

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