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スイスのプライベート・バンクが

「伝統的投資」にこだわるのは何故か?

 

代替投資

 「代替投資」(オルタナティブ・インベストメント、alternative investment)という言葉をご存じでしょうか。

 これは、伝統的な投資である株式、債券への投資以外の投資を指す用語であって、具体的には、「プライベート・エクイティ」、「ヘッジファンド」、「商品先物ファンド」、「不動産投資信託」などがあります()

 ()プライベート・エクイティ投資(private equity、ベンチャー・キャピタルなどの未公開株等への投資)は個人ではなかなか手が出せませんが、商品ファンドや不動産投資信託(REIT、日本製のものを”J-REIT”などと呼んでいます)の場合は小口の投資が可能ですので、一般の個人でも手が届きます。また、最近では、日本でも一部富裕層の間で「ヘッジファンド」への投資があるようです。

 

 これら「代替投資」に共通する特徴は、「伝統的」な株式、債券市場との連動性が低いことです。従って、株式市場、債券市場が下がれば伝統的な投資手法による投資信託やミューチュアル・ファンドはつられて値を下げますが、「代替投資」によるファンドでは逆に収益を上げることもあり得ます。

 

アメリカとスイスの違い

 一般的に言って、プライベート・バンク、プライベート・バンキングの世界で、このような「代替投資」の分野に強いのは、アメリカの銀行であると言われています(厳密には、アメリカの銀行は「プライベート・バンク」とは言えないので、「商業銀行のプライベート・バンキング部門」ということになります)。アメリカの銀行は、次々と目新しい金融商品を開発しては顧客に勧めているように見受けられます。

 これに対して、スイスのプライベート・バンクは、「伝統的投資」にこだわっているように見えます。

 

「市場が上がれば上がり、下がれば・・・」

 スイスのプライベート・バンクでは、銀行といっても「預金」だけを提供しているわけではありません。自前のファンドなども売っているわけですが、その投資手法はあくまで「伝統的」な「株式・債券への投資」なのです。

「弊行で提供しているファンドは、まことに保守的かつ伝統的なもので、市場が上がれば上がり、市場が下がれば下がるというものでございます」と、普段お付き合いしているプライベート・バンカーは何の悪びれもなく、堂々とおっしゃいます。

 巷では、「代替投資」が注目を集めているというのに、何と芸のない・・・という印象は否めません。それにしても、「市場が下がれば下がる」などと、いかにも自信満々に、何でもないことのように言えるのは何故か。「下がる」ということは、その分だけ顧客の資産が失われているということなのに・・・。そんな疑問を抱かれる方も、きっと多いことでしょう。

 

「資産家への道」は25年、30年かかって当たり前

 ところが、この疑問は、複数の専門家の一致した見解を参照することによって氷解します。彼らによれば、「いかに高度な技術を駆使したとしても、長い目で見れば『市場』に勝てるファンド・マネージャーなど現実にはほとんどいない」というのです。

 さらに、「たとえ1929年の大暴落の前日に株を買ったとしても、暴落時に売らずに30年間持ち続けていれば、大金持ちになったはず」であり、「結局、その利益は、『堅実に』貯金し、大暴落の影響を受けなかった人よりもはるかに大きい」というのです。

 彼らの一致した意見によれば、投資に勝って億万長者となるためには、市場が上がろうが下がろうが、「決して売ることなく」、愚直なまでに投資を継続することです。それも、5年や10年という単位ではなく、25年、30年は当たり前。それが、「お金持ちに至る最も確実な投資法である」といいます()

 ()ただし、R・ターガート・マーフィーとエリック・ガワーによれば、日本の株式市場は例外であり、それは「本物の株式市場ではない」から投資してはいけない、ということです。その意味するところは、株とは本来「会社の所有権を分割したもの」なのに、「株主に何の権利も与えない」日本の株は、「本物の株ではないマガイモノ」である、というのです(『日本は金持ち。あなたは貧乏。なぜ?』毎日新聞社)

 

長期的に考える

 実際に、資産家、また将来資産家となるべき資質を持った人というのは、物事を長期的に考えます(ある欧米の富豪は、投資期間を「20年」と「永遠」の二つに分類して考えるとか)。そんな顧客が何ゆえにスイスのプライベート・バンクに資産を預けるのかと言えば、その究極の目標は「子孫に財産を残す」ことです。だとすれば、その期間は「20年」よりは、むしろ「永遠」でしょう。2年や3年株安が続いたとしても、スイスのプライベート・バンカーが一向に動じることなく、「伝統的投資」を続けるのは、そこに理由があったのです。

彼らは、数百年にわたり、伝統的投資が資産家や富豪を生み出すのを目の当たりに見てきたわけですから、その自信も当然というべきでしょう。

 

1000万円でも預かる理由

 スイスのプライベート・バンクと言えば、「億単位でなければ預かってもらえない」という一般的なイメージがあります。大多数の銀行がその通りであるのは確かですが、中には1000万円程度から資金を受け入れる銀行もあります。

 これを「不思議なこと」としてその理由を訊ねられることがよくあります。

実は、このような「例外的」な銀行の考え方も、上のような「長期的な視点」から見ればより良く理解できるのではないでしょうか。・・・つまり、彼らは知っているのです、「今日の1000万円」が、30年後、40年後には「億」ともなり得ることを()

 ()例えば、1000万円を年10%の複利で運用すれば約25年で1億円となります(参考までに、前掲書によれば、1929年の大暴落を含みその前日から30年間のNY市場の利回りを平均すると年率13%になるそうです)。また、たとえ当初の資金は少ないとしても、このような「長期的な視点」を持ちうる顧客であれば、銀行との関係も良好となるであろうし、いずれ財をなして銀行の優良顧客となる可能性も高い、と期待している面もないわけではないでしょう。

 

 つまり、このような「少額でも受け入れる」スイスのプライベート・バンクにとって、「1000万円」とは、数十年かけて「億」に育てるべき「種」のようなものなのです。

 

投資のリスクは「投資し続ける」ことによって減る

ですから、同じ「1000万円」であっても、その「種」となる見込みが薄いもの、すなわち、数年後には引き出されるような、あるいは「なけなしの財産」である場合は、顧客の側でよほど熱心に頼み込まない限り、銀行はまず受け入れません。「リスクがある。あなたの資産を損なう可能性があります」と言ってお断りするのです(どのような金融商品についても言えることですが、リスクは確かにあります。先にも取り上げた専門家の意見からも分かるように、投資のリスクを軽減するには、数十年にわたって「投資し続ける」しかないのです()1000万円程度の資金の場合は、そのように「投資し続けられる」余裕資金であるということが、銀行側の受け入れ条件となります)

 (注) つまり、「リスクに耐えうる資金」とは、「損をしても構わない資金」のことではなく、「(リスクが無視できるほどの長期間にわたり)投資し続けられる資金」を意味するのです。

 

 数十年の長きにわたって「投資し続ける」ことにより「投資のリスク」を減らし、「1000万円」を「億」にまで育てる。・・・まさに、「数世紀にわたって資産家を育ててきた」スイスのプライベート・バンクならではの考え方と言えると思います。

 

 

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