金融・投資情報に広告は必要か??
メディアとは「撒き餌」である
新聞・雑誌と言えば広告は付き物です。
実は、ほとんどの雑誌は広告収入が頼りであり、雑誌の販売でビジネスをしようとは考えていません。新聞や雑誌が発行部数を競っているのは、販売収入のためではなく良いスポンサーを得るためです。彼らの本当の顧客は読者ではありません。広告主なのです。
釣りに喩えれば、スポンサーは釣り人、その商品は餌、広告の入った新聞や雑誌は魚を集めるための「撒き餌」みたいなものです。私たちは「新聞や雑誌を購読している」と言い、その目的は必要な情報を得ることだと自分では思っていますが、世の中の仕組みはそうなっていません。撒き餌を撒く釣り人を見て、魚を肥えさせるのが目的だとは誰も思わないでしょう。
広告とは「経済メディアの癌」である
このように、「広告」は、新聞・雑誌というビジネス・モデルの根幹をなしています。すべての広告が悪であるとは言い切れませんが、こと経済、金融、投資の情報にかかわる広告は、我々一般読者にとって、メディアの「癌」のようなものであると、ほぼ断言して構わないのではないでしょうか。
何故なら、経済紙、ビジネス雑誌、マネー雑誌、投資情報誌などが取り扱う主な内容は「企業」や「金融・投資商品」についてのものですが、その主なスポンサーもまた「企業」や「金融・投資商品の業者」であるからです。
つまり、経済紙、ビジネス雑誌、マネー雑誌、投資情報誌などは、結局のところ「現在の広告主や、将来広告主になるかも知れない業者についての情報」を載せていることになります。従って、多かれ少なかれ(古い言い方ですが)「翼賛的」な内容に傾かざるを得ないのは理の当然です。
広告依存がもたらす効果
例えば、最近(2006年9月)、ある老舗電機メーカーの業績の下方修正が報じられ、株価が大幅に下落しました。
多くの個人投資家にとって、これは晴天の霹靂であったに違いありません。けれども、日頃、その会社の内情を取材している、言わば「番記者」のようなジャーナリストにとっては、この有名企業が抜き差しならない問題を抱えていることくらいは、おおよそ察しが付いていたのではないでしょうか。
しかし、記者がいくらそう思っていたとしても、この会社の広告が掲載されている(または将来掲載される可能性が高い)媒体に、そんな記事が書けるはずがありません。書こうとしても、ボツになるか、上から「公式に下方修正が発表されるまで待て」などと言われるに違いないのです。
かくして、真実は伝えられず、個人投資家は損失を被ることになります。「広告は癌である」という意味がお分かりになったでしょうか。
「翼賛的でないメディア」もある
では、どうすれば「翼賛的」ではない情報が得られるのでしょうか。
言うまでもなく、広告収入に依存せず、諸々の「圧力」や「しがらみ」を出来る限り排したメディアから情報を得る以外に方法はありません。
実は、上記の電機メーカーの不振に関する記事が、下方修正が正式に発表される数週間前には、その種のメディア(雑誌)にすでに掲載されていました。これを読んでいた人は、業績下方修正の報道に接しても驚かなかったはずです。驚いたとすれば、その記事の先見の明と、下方修正前という絶妙のタイミングだったでしょう。
正に、広告収入に頼る大手マスコミには真似のできない芸当です。
では、そのようなメディア(雑誌)は、どうすれば手に入るのでしょうか。
書店にはない3つの情報誌
残念ながら、書店等では手に入りません(注)。これらを入手するには、インターネットなどを通じて1年や3年単位で定期購読するしか方法はありません。
(注)その理由としては、おそらく、広告を最小限に抑え、さらに価格も比較的安くしている関係で、小売店や取次ぎ等を介さないことにより利益率を高めているのだろうと想像されます。また、読者を定期購読者のみに限定して部数を抑え、あえて目立たない存在となることで、各界からの有言無言の圧力を避けようとしているのかも知れません。
代表的な雑誌としては、以下のものが挙げられますが、いずれも、政治、経済、ビジネス、社会等の問題を扱う総合的な情報誌です(念のために言っておきますが、投資情報誌ではありません。もちろん、上記電機メーカーの例のように掲載内容の一部を投資情報として用いることも可能です)。
『選択』(選択出版社)
『フォーサイト』(新潮社。ウェブマガジンに移行)
『ベルダ』(KKベストブック)
これら3誌の特徴を述べるなら、まず『選択』は、原則として記事が無記名であるのに対して、『フォーサイト』と『ベルダ』は記名記事が多いということです。
記名記事が多いということは、記者が個人として記事の内容に責任を負うということです。それだけ信頼が置けるという感じがしますが、私見では、一個人として政府や大企業に真っ向から立ち向かうというのは相当に勇気のいることです(訴訟を提起される可能性もありますし、「今後取材を受けてはならないジャーナリスト」とみなされた場合、個人は路頭に迷うおそれもあります)。
その意味で、無記名を原則とする『選択』の姿勢は、「記事の責任は記者個人に負わせず会社が引き受ける」ということですから、一つの見識であると思います。
国際情勢と業界の黒い噂
『フォーサイト』は、大手出版社である新潮社の雑誌です。「大手」という言葉に信頼される方もあると思いますが、逆に、あまりやばいことを書いてしまうと、新潮社の他の雑誌などに影響が出る可能性もないわけではありません。ですからその点では慎重な姿勢が見られるかも知れませんが、中国情報をはじめとする国際情勢に関する記事は極めて優れていますし、国内政治・経済についても鋭い分析が見られます。
『選択』と併読することで、時代を先読みする見方が学べることは請け合いです。
最後に、『月刊ベルダ』は、業界の裏話や暴露的な内容で、あえて「うわさ」のような情報まで取り上げているという感じがします。「うわさで買ってニュースで売る」という株式投資の格言がありますが、その意味で役に立つ可能性はあります。
当方の見方では、『選択』と『フォーサイト』をメインに熟読し、『ベルダ』は参考程度という位置づけですが、余裕があれば3誌併読するのが理想的でしょう。
いずれも、上記のリンクから購入することができます。書店での購入はできません。
既存のシステムに風穴を開ける
最後に、繰り返しになりますが、広告収入に頼っているメディア、とりわけ経済紙、ビジネス雑誌、マネー雑誌、投資情報誌などは、業者が一般消費者にバラ撒く「撒き餌」に過ぎないということは、いくら強調しても強調し過ぎるということはありません。撒き餌は一見どんなに良質で優れたものであっても、「あの餌に喰い付いてはならない。釣り針が隠れているから」などと教えてはくれないのです。
このように、世の中で確立したシステムの裏側には「既得権者が得をする仕組み」が巧みに組み込まれています。そこに引っかからないためには、ゲリラ的な手段をとるしかありません。
当サイトのコンセプトもそうですが、上記の「書店にない雑誌」もまた、正にそのゲリラ的な手法をとることで既存のシステムに風穴を開けようとしているのです。
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