「ペイオフ=日本破綻」から資産を守るために
「分散預金」は有効か?
まず、最初にお断りしますが、このページでは、いわゆる「ペイオフ」についての一般的な教科書風の解説は行ないません(注)。
「銀行が破綻した場合に、保護される預金額が預金者一人当たり元本1000万円とその利子までに限定される」というペイオフ。だから、「1000万円を超える預金は分散しなければならない」――教科書的な解説を読むまでもなく、誰でも思い付く「対策」でしょう。
確かに、ペイオフ問題についての「教科書的な説明」を読む限りでは、「預金の分散」さえすれば、問題は解決するように見えます。しかし、単に「預金を分散する」だけで、本当に資産が保全されると言えるのでしょうか。
また、最近話題のいわゆる「決済性預金」に預ければ、本当に資産保全対策としては十分なのでしょうか。
答は「ノー」です。
「ペイオフの本質」を見誤るな!
「預金を1000万円以下に分散して複数の銀行に預けたとしても、また、いわゆる決済性預金に預けたとしても、資産は十分に保全されない」。
これが結論です。
一般の国民にとって「ペイオフ問題」とは、言うまでもなく「困難な経済状況の中でいかにして資産を守るか」ということに尽きます。ところが、教科書的なペイオフの解説では、この「困難な経済状況」という要素が全く抜け落ちているか、極めて甘い現状分析に基づいているのです。
この点を見誤ると、現在、資産家・富裕層と言われ、数億・数千万の預貯金がある方々であっても、文字どおり「一夜にして」資産を失う可能性があります。
逆に、今はさほどの資産がない人々でも、問題の本質をつかみ、必要な対策をとることによって逞しく生き残ることができるはずです。
このページでは、「ペイオフ問題」の本質を理解し、いわゆる富裕層から一般の方々まで、その資産に応じた「ペイオフ対策=生き残り戦略」について考えます。長いですが、是非とも最後までお読みになって参考にして下さい。
(注) だからといって、「ペイオフや預金保険制度についての教科書的な知識は無視してもいい」わけではありません。「ペイオフなんて貯金が1000万円以上ある人だけの問題だ」と思っておられる方は、ペイオフについての教科書的・お役所解答的なQ&A(たいていは預金保険機構による解説の引き写しです)を読んだだけでも、それが大きな誤解であることに気付くでしょう。例えば、ペイオフが実施されれば、当面「預金は60万円しか引き出せなくなる」などの問題があります。
ペイオフの「本当の問題点」とは?
「経済」とは、常にダイナミックに変化する生き物です。この変化の中では、同じ1000万円であっても、今日の1000万円と明日の1000万円では決して等価ではあり得ません。しかも、日本経済は、少なく見積もっても700兆円という巨額の国家債務と、処理しても処理しても増えつづける銀行の不良債権という火種を抱えているのです。
この「火種」を見据えつつ、めまぐるしく変わる経済状況の中でどう資産を守るか。その戦略とのかかわりで考えなければ、いくら「ペイオフ問題」を論じたとしても意味がないのです。
そこで、資産の保全という観点から見た場合、「ペイオフ」の問題点は、次の2点に集約できると考えられます。
1. 決済性預金を「全額保護する」ことなど本当に可能なのか。
2.
預金保険では、外貨預金が保護されない。
以下、この問題を中心に論じて行くことにします。
「決済性預金の全額保護」は可能か?
小泉首相の強い意向により、「決済性預金の全額保護」が打ち出され、2003年に完全実施されるはずであったペイオフの解禁が事実上先送りされました。
想像するに、この報道に胸を撫で下ろされた方も、多いのではないでしょうか。
しかし、たとえ「決済性預金」(その具体的な内容は不透明です)のみであっても「全額保護する」ことなど本当に可能なのでしょうか。
2002年に定期預金のペイオフが解禁されてからわずか数ヶ月の間に、42兆円もの資金が普通預金等に流れたと言われています。普通預金などの「ペイオフ解禁」が2003年に先送りされたためです。
もし、全額保護される「決済性預金」なるものが創設されれば、同様に数十兆単位の大量の資金が流れ込むことは必至です。
そんなものを全額保護することが現実に可能なのでしょうか。
常識的に考えれば、可能であるはずはありません。
そんなことが本当に可能なら、最初から「ペイオフ解禁」などと言い出さなければ良かったはずです。
安易な「全額保護」は、かえって危険だ
「ペイオフ全面解禁によって日本の金融システムの体質強化・信頼性回復につながる」などと言われていますが、「信頼性」ということで言うなら、「全額保護される方が信頼性が高い」に決まっています。もちろん、もし、それが「本当に、確実に、全額保護される」なら、という条件付ですが。
けれども、仮に、全額保護が現実的でないなら、「1000万円までなら保証できますが、それ以上はできません」と正直に言ってしまった方が、むしろ信頼性は高いと言えます。
保証の限度を明確にした方が、預ける側もそれに応じた資産保全の戦略を立てられますから、結局は預金者にとって都合が良いからです。
最も悲惨なのは、「全額保護します」と言ったにもかかわらず、現実には「保護できなかった」場合です。「全額保護」を信じて財産を預けた預金者の損失は言うまでもありませんが、日本の金融システムに対する信頼性が失墜し、その結果として、全国民を巻き込んだ深刻な経済パニックを引き起こすことになる可能性が極めて高いからです。
そして、その「経済パニック」こそ、かねてより経済学者が指摘していた「円価の大幅な下落」、すなわち「制御できない超インフレ」に外なりません。
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