凡人の「ひらめき」が莫大な利益を生む、
権利収入15億円の「秘密」とは??!!
Part 1 権利収入(印税)15億を生んだ凡人の話
Part 2 弱者の知財をどう守るか—こんなに違う日本と米国
Part 3 100万円のコストが数千円に?!
Part 1 権利収入(印税)15億を生んだ凡人の話
あるアマチュア・ゲーム開発者の話
これは、アメリカ合衆国のある小さな町のお話です。
その人は、理髪師でした。
彼は妻とあるカードを用いたゲームを考案し、自分の理髪店で細々と売っていたということです。
その後、彼はそのゲームの「権利」をある小さな会社に売り、ゲーム1セットが売れるごとに10セントを得る契約を交わしました。
その小さな会社は、やがて大手の玩具・おもちゃメーカーに買収されたようです。
理髪師夫婦が大金持ちになったことは、想像に難くありません。
何故なら、彼らの考案したカード・ゲームは、世界で1億5000万セット売れたからです。
ゲームがもたらしたであろう権利収入(ロイヤルティ)は、1セント=1円で単純計算しても15億円。円が安かった時代のことですから、実際はもっと多かったでしょう。
ゲームの「権利」とは何か
ところで、この理髪師が売ったという「権利」がどのような「権利」であったのか、以前から気になっていました。
何故なら、ゲームのルールを考案しても特許などは普通とれないからです。
ゲームの商標権はとれるかも知れませんが、実質的に同じゲームを別の商品名で売り出すことを妨げることはできません。
では、何が、ゲーム開発者としての理髪師夫婦の権利を守っていたのでしょうか。
私たちは、このゲームの権利保護について、簡単な調査をすることにしました。
その結果判明したことは、いくつかの「著作権」がこのゲームの権利保護にかかわっているということでした。
高くつく特許の取得
「知的財産権(知財)の時代」と呼ばれる今日、「アイディアをお金にしよう」と考える人は少なくないはずです。
その場合、誰もが最初に思い付く「知的財産」とは、おそらく特許であろうと思います。
素人目にはいかにもお金になりそうに思える「特許」ですが、いざ取得しようとすると、商品化の目処も立っていない段階からコストばかりがかかるものだと気が付きます。
そこで数年前から「権利の保護」を名目に、趣味の発明家、町の発明名人といった人たちの考案を民間機関に登録させて手数料を稼ぐという新手の商法が現れて、登録の適法性をめぐって裁判沙汰にまでなっていると聞いています。
発明の権利を守るには特許権の取得以外に適法な方法があるとは思えませんが、裏を返せばそれだけ特許出願が面倒で、お金がかかるということでしょう。
特許に適さないアイディアについて
しかし、ゲームや料理のレシピなど、そもそも特許などの取得にそぐわない考案の権利はどのようにして守ればいいのでしょうか。
その答えの一つが「著作権」にある、ということが、冒頭に紹介した「理髪師のゲーム」の例から知られると思います。
このゲームは、アメリカの著作権庁(Copyright
Office 著作権局とも訳す)に著作権登録されています。
実は、厳密に言えば、アメリカの著作権法といえども、ゲームを単にアイディアのレベルで保護するということはありません。けれども、上記の著作権登録がゲームの知的財産権の保護を目的として一定の役割を果たしたことは、ほぼ間違いないでしょう。
米国著作権庁のホームページを見ると、ゲームや料理のレシピの著作権(とその登録)について、わざわざ特別なページを設けて解説してあります。それだけ一般の関心が高い分野であるということでしょうが、ゲーム関連の著作権の登録件数も、実際かなりの数にのぼるようです。
「商品」が著作権登録される
一般に「著作権」と言えば、音楽や文学、映画など文化的なものをイメージしがちですが、アメリカの著作権登録簿を閲覧すると、およそ文化芸術とは無縁の、意外な分野のものが目に付きます。実は、ゲームはその一つの例にすぎません。
他にも、おもちゃや縫いぐるみ、建築模型などが「彫刻」として登録されているかと思えば、商品の容器や箱のパッケージ・デザインも「ビジュアル・アート」として登録されていたりします。衣類、ベルト、宝飾品、ジュエリーなどの装身具、食器、鍋、プランターなどの日用品、雑貨、壁紙、照明器具、写真フレームなどのデザインもそうです。
ショーウィンドウのディスプレイや広告写真が「ビジュアル・アート」として登録されているのはまだ理解できる気もしますが、ボーリングのボールとピンのセットが「彫刻」であるというのは、どうにも不思議な気がします。しかし、アメリカ著作権庁の登録簿を見ると、実際にそのように登録されているのです。
また、イラストや絵の要素のないオーソドックスな地図であっても、グラフィックとして登録の対象となります。
産業化する米国の著作権
さらに、「文芸作品」の分野では、小説や詩、ノンフィクションなどのいわゆる典型的な文学以外にも、電話帳、住所録、名簿のようなものも登録可能ですし、コンピュータ・プログラムがこのカテゴリーで登録されるのはよく知られていると思います。
こうしてみると、伝統的な著作物である文学、美術、音楽などの作品の登録件数はむしろ少数ではないかと思えるほどです。著作権の登録といっても、あたかも特許、商標の登録と同様にすでに産業化しているのです。実際、法人などの依頼を受けて創作された、いわゆる「職務著作物」の登録が少なくありません。著作権者、著作権請求人として法人名が記載されているのも目に付きます。
著作権登録は大盛況
アメリカでも日本と同様に、著作権は作品の創作により自動的に発生し、米国著作権庁での著作権登録は権利保護の要件ではありません。
それなのに何故、これほど多様な分野で、著作権の登録がさかんに行われているのでしょうか。
それは、何と言っても著作権の登録が著作者の権利保護の手段として有効に機能しているからです。
アメリカでは、著作権登録の内容は、著作権侵害の裁判において証拠として採用されます。ということは、著作権侵害の訴訟を提起された場合に、著作権登録をしていなければ圧倒的に不利であるということでしょう。知的財産権の保護が徹底している国柄ですから、訴訟に負ければどれだけの賠償金をとられるか分りません。
逆に、訴訟に勝てば多額の賠償金を勝ち取る可能性もあります。
特許などの出願とは比較にならない少額の登録料(申請料)で、それだけの有利があるのですから、登録しない手はないのです。
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